非化石価値取引市場とは?非化石証書の種類とメリット・取得方法を解説

非化石価値取引市場とは?非化石証書の種類とメリット・取得方法を解説
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企業の脱炭素対応や再エネ調達への関心が高まるなか、注目を集めているのが、再エネ電気の環境価値だけを取引する「非化石価値取引市場」です。非化石価値は対象電源によって3つの種類に分かれており、取引される市場も異なります。

本記事では、非化石価値取引市場の仕組みや3種類の証書の違いのほか、企業が非化石証書を活用するメリットと取得方法についてご紹介します。

非化石価値取引市場とは非化石価値を売買する市場

非化石価値取引市場とは、非化石電源が持つ環境価値を「非化石価値」として売買する市場です。非化石価値取引市場の運営・管理は、「日本卸電力取引所(JEPX)」が担っています。

2018年5月に創設された当初は、小売電気事業者のみが参加できる市場でしたが、2021年度以降は制度を拡充。現在では、一定の条件を満たした需要家企業や仲介事業者も非化石価値を購入できます。

非化石証書は非化石電源の環境価値を証書化したもの


非化石証書とは、非化石電源が持つ環境価値を1kWh単位で証書化したものです。非化石電源とは、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料ではなく、非化石エネルギーを使った発電方法を指します。具体的には、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギー(再エネ)と、原子力などが非化石エネルギーです。

発電された電気には「電気そのものの価値」のほかに、どの地域・場所で発電されたかという「産地価値」、どの発電所・発電方式で発電されたかという「特定電源価値」、発電時にCO2を排出しないという「環境価値」が存在します。非化石価値は、この環境価値だけを切り離し、単独で売買できるようにしたものです。企業は非化石価値を購入することで、実際に再エネ発電設備を導入しなくても、使用する電力の環境価値を高められます。

非化石証書制度が創設された背景

非化石証書制度が創設された背景として、主に「エネルギー供給構造高度化法」と「再エネ賦課金の負担軽減」という2つの要因が挙げられます。

エネルギー供給構造高度化法

エネルギー供給構造高度化法は、電気事業者に対して2030年までに非化石電源比率を44%以上に高めることを義務付ける法律です。資源エネルギー庁が所管しており、正式名称は「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」といいます。

非化石電源を自社で導入するためには多大な設備投資が必要ですが、非化石価値の購入により、非化石電源比率を計算上高めることが可能です。また、電気事業者だけでなく需要家企業も購入した非化石価値を、「事業活動に使用する電力に伴うCO2排出削減量」として算定できます。

再エネ賦課金の負担軽減

再エネ普及のため、電力会社は「FIT制度(固定価格買取制度)」にもとづいて、国が定めた一定の価格で再エネ由来の電力を買い取っています。買い取りに要する費用は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として需要家が負担する仕組みです。

FIT非化石証書の取引による売上は、この再エネ賦課金の原資にあてられるため、FIT非化石証書の取引が活発になるほど需要家の負担軽減につながります。

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非化石証書は3種類に分けられる

非化石証書は、対象となる電源の違いによって「FIT非化石証書」「非FIT非化石証書(再エネ指定)」「非FIT非化石証書(再エネ指定なし)」の3種類に分けられます。

FIT非化石証書

FIT非化石証書は、太陽光・風力・バイオマス・地熱など、FIT制度の対象となる再エネ電源から発電された電気の非化石価値を証書化したものです。

非FIT非化石証書(再エネ指定)

非FIT非化石証書(再エネ指定)は、大型の水力発電やFITの指定期間が終了した電源など、FIT制度対象外の再エネ電源から発電された電気の非化石価値を証書化したものです。

非FIT非化石証書(再エネ指定なし)

非FIT非化石証書(再エネ指定なし)は、原子力発電など、化石燃料由来ではないものの再エネには該当しない電源から発電された電気の非化石価値を証書化したものです。

現在はすべてトラッキング付き非化石証書

トラッキング付き非化石証書とは、透明性を確保するために発電情報などの情報(トラッキング情報)が紐づけられた非化石証書です。

2024年度から導入された「全量トラッキング制度」により、現在すべての非化石証書には、発行段階から以下の属性情報が付与されています。

<非化石証書に付与されるトラッキング情報>
  • 発電種別:太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど具体的な発電方法
  • 発電所名:どの発電所で発電されているか
  • 発電所所在地:発電所の詳細な場所
  • 運転開始後15年未満か否か:15年未満の発電所の電力・証書は、環境価値が高いと評価される

2つの非化石価値取引市場

非化石価値取引市場には、「再エネ価値取引市場」と「高度化法義務達成市場」の2つが存在します。それぞれの違いを表にまとめると以下のとおりです。

■非化石価値取引市場の違い     


再エネ価値取引市場

高度化法義務達成市場

取引対象証書

FIT非化石証書

非FIT非化石証書
(再エネ指定・再エネ指定なし)

売り手

電力広域的運営推進機関(OCCTO)

発電事業者

買い手

小売電気事業者、需要家、
仲介事業者

小売電気事業者

オークション形式

マルチプライスオークション

シングルプライスオークション

再エネ価値取引市場

再エネ価値取引市場は、電力広域的運営推進機関による販売を通じて、小売電気事業者と需要家が非化石価値を直接購入できる市場です。

RE100(Renewable Energy 100%:事業活動に使用する電力を100%再エネでまかなうことを目指す国際的なイニシアチブ)など、再エネ電気へのニーズの高まりに対応する形で、2021年11月に開設されました。

取引対象はFIT非化石証書で、売り手が価格を提示せずに出品し、買い手が希望価格を示す「マルチプライスオークション」方式で取引されます。

高度化法義務達成市場

高度化法義務達成市場は、売り手は発電事業者、買い手は原則として小売電気事業者のみを対象とする市場です。

取引対象は非FIT非化石証書(再エネ指定・再エネ指定なし)で、すべての入札情報をもとに売り注文と買い注文が交差する点を算出し、参加者全員がその価格(約定価格)で取引を行う「シングルプライスオークション」方式が採用されています。

非化石証書とほかの環境価値証書・クレジットとの違い

環境価値を証書化する制度としては、非化石証書のほかにも「グリーン電力証書」「I-REC」など複数の種類が存在し、「J-クレジット」も類似の用途として活用されることがあります。

いずれもRE100やCDP(旧称Carbon Disclosure Project:企業や自治体等に環境情報の開示を求める国際的なNGO)、SBT(Science Based Targets:パリ協定にもとづいて設定された温室効果ガス排出削減目標)への報告に活用できますが、それぞれ概要が異なります。

グリーン電力証書とは?

グリーン電力証書は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスエネルギーなど、再生可能エネルギーのみで発電された電力の環境価値を売買できるようにした証書です。そのため、原子力は対象に含まれません。

一般財団法人日本品質保証機構(JQA)が中心となり、資源エネルギー庁の「グリーン電力証書ガイドライン」にもとづいて運営されています。

グリーン電力証書の購入により、再生可能エネルギーの利用を支援し、環境負荷の低減に貢献できるほか、グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度における国の追加認証を受けることで、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の調整後排出量の算定や、RE100・CDP・SBTへの報告などにも活用できます。

I-RECとは?

I-REC(International Renewable Energy Certificate:国際再生可能エネルギー証書)は、再生可能エネルギーで発電された電力の属性情報を証明する国際的な証書です。

世界60ヵ国以上で発行されており、RE100・CDP・SBTへの報告に利用できるほか、海外拠点のCO2排出量削減などにも活用できます。発電設備・発電量・発電日時などの属性情報が第三者機関によって認証され、改ざんできない「唯一性」と、発電の履歴をさかのぼれる「追跡性」が担保されている点も大きな特徴です。

近年、日本国内でもI-RECを活用する企業が増えつつあります。背景にあるのが、国際基準での再エネ調達・情報開示を求める企業の増加です。日本国内に拠点を置く外資系企業では、本国のグループ方針にもとづき、世界共通で通用する証書での再エネ調達が求められるケースが少なくありません。また、RE100・CDP・SBTに取り組む企業や、海外拠点を含めたグループ全体で再エネ利用を進めたい企業などを中心に、国内外で一貫して利用できるI-RECへのニーズも着実に広がっています。

さらに、I-RECは発電期間が日単位で明示されており、ビンテージ管理に適しています。日本の非化石証書では、FIT非化石証書は単体では発電月を特定できず、非FIT非化石証書についても発電期間の考え方が電力エリアや発電設備によって異なる場合があります。一方、I-RECでは発電期間を日単位で追跡できるため、発電時期に関する情報をより細かく管理できます。

また、I-RECは失効期限の制約がなく、適切に管理されている限り継続して保有できます。加えて、発行・移転・償却の手続きが比較的迅速であり、非化石証書と比べて実務上取り扱いやすいことから、機動的な証書調達を求める企業にも活用されています。

ただし、日本独自の法律であるエネルギー供給構造高度化法の義務達成や温対法には利用できないため、ほかの環境価値証書との使い分けが必要です。

テス・エンジニアリングの環境価値取引サービスについてはこちらをご覧ください
環境価値取引|テス・エンジニアリング株式会社

J-クレジットとは?

J-クレジットは、温室効果ガスの排出削減量・吸収量をクレジットとして販売・購入できる制度です。

再生可能エネルギーの利用だけでなく、省エネ機器の導入や森林保全なども対象に含まれるため、非化石証書よりも対象範囲が広いことが特徴です。経済産業省・環境省・農林水産省の3省が共同で運営しており、一部は温対法・省エネ法への対応や、RE100・CDP・SBTへの報告、経団連カーボンニュートラル行動計画などに活用できます。こちらは電気の取引に基づくものではなく、温室効果ガスの排出削減「量」を取引するものとなっています。

企業が非化石価値を活用するメリット

一般企業が非化石価値を購入・活用することには、さまざまなメリットがあります。代表的なものを3つご紹介しましょう。

非化石電源比率の向上

企業は非化石価値を購入することで、自社で再エネ発電設備を導入しなくても非化石電源比率を向上できます。

なお、非化石価値は1kWh単位で購入量を決められるため、企業の再エネ化の指標や目標に合わせて、段階的に取り組みを進められる点も特徴です。

温対法対策

温対法は、一定規模以上の温室効果ガスを排出する「特定排出者」に対して、温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することを義務付けています。非化石価値は、温室効果ガス排出量の算定・報告に活用できます。

企業イメージの向上

非化石価値の購入により、CO2排出量の削減に取り組む姿勢を消費者や取引先、投資家にアピールできる点もメリットです。大企業などでは、サプライチェーン全体でCO2排出量の削減に取り組んでいるケースもあります。非化石価値の購入で、そうした企業との取引基盤を整えることができるでしょう。

非化石価値の取得方法

一般企業が非化石価値を取得する方法としては、「直接取引」「市場取引」「仲介事業者」の3つが挙げられます。それぞれの違いを解説しましょう。

直接取引

直接取引とは、発電事業者と直接交渉して非化石価値を調達する方法で、相対取引とも呼ばれます。双方の合意のもとで売買を行うため市場の影響を受けにくく、取引価格や条件設定、取引量などを調整しやすい点が特徴です。

市場取引

市場取引とは、再エネ価値取引市場に参加して非化石価値を購入する方法です。参加にあたっては入会金と年会費を支払って、JEPXの会員になる必要があります。

仲介事業者

仲介事業者とは、新電力会社や環境価値の仲介を専門に扱う事業者を介して非化石価値を購入する方法です。購入者によるJEPXへの入会は不要で、手間のかかる業務を仲介事業者に任せられますが、証書の価格に加えて仲介手数料が必要になります。

非化石価値の有効期限は6月下旬

非化石価値には毎年6月下旬という有効期限があるため、価値を取得するタイミングには注意が必要です。

例えば市場取引で購入する場合、非化石価値のオークションは毎年8月を第1回として、11月・翌年2月、翌年5月の計4回開催されます。つまり5月の第4回オークションで購入した非化石価値は、使用期限が1ヵ月ほどしかありません。非化石価値を活用する時期と、有効期限のバランスを考慮した上で取得することが重要です。

非化石価値の活用はテス・エンジニアリングにご相談ください

テス・エンジニアリング株式会社は、非化石価値やI-RECをはじめとする環境価値証書の取引に関して、豊富な知見と実績を積んでいます。

各企業様の実現したい内容や目的に応じて、適切な証書量・活用方法を整理した上で、証書調達にとどまらず運用・開示まで見据えた支援を行っています。また、太陽光発電システムや蓄電システムなどと組み合わせた、実質的な省エネ・再エネの総合提案も可能です。

非化石価値の活用をご検討中の企業様は、ぜひテス・エンジニアリング株式会社にご相談ください。

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よくある質問

Q. 非化石証書とは何ですか?

非化石証書とは、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料ではなく、非化石エネルギーを使った発電方法(非化石電源)が持つ環境価値を、1kWh単位で証書化したものです。対象電源によって「FIT非化石証書」「非FIT非化石証書(再エネ指定)」「非FIT非化石証書(再エネ指定なし)」の3種類があります。購入した非化石価値は、非化石電源比率の向上や温対法対策などに活用できます。

Q. 非化石価値はどこで購入できますか?

非化石価値の購入方法には、発電事業者と直接交渉する「直接取引」、再エネ価値取引市場に参加する「市場取引」、新電力会社などの「仲介事業者」を介する方法の3つがあります。なお、市場取引を行うにはJEPXへの入会が必要ですが、仲介事業者を利用する場合は入会不要で購入できます。

Q. 非化石価値には有効期限がありますか?

非化石価値には毎年6月下旬という有効期限が設けられています。市場取引のオークションは毎年8月・11月・翌年2月、翌年5月の計4回開催されますが、5月の第4回オークションで購入した場合は使用期限が1ヵ月ほどしかないため、購入のタイミングには注意が必要です。


 

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