系統用蓄電池とは?仕組みや電力ビジネスの収益モデルを解説
再生可能エネルギーの普及が加速する中、電力系統の安定化を担う「系統用蓄電池」への注目が高まっています。単に電力をためるだけでなく、市場取引を通じた収益化や電力需給の調整まで担うこの設備は、エネルギー事業の新たなビジネスチャンスとして多くの企業が参入を検討しています。
しかし、系統用蓄電池事業への参入には、制度や技術、電力市場などの専門的な知識と戦略が不可欠です。
本記事では、系統用蓄電池の基本的な仕組みや収益モデル、リスク・対策など、事業参入を検討する企業担当者に向けてわかりやすく解説します。
系統用蓄電池とは電力系統に接続して電気を充放電する蓄電設備

系統用蓄電池とは、「電力系統」に直接接続して、電力を充放電する大規模な蓄電設備です。従来の産業用・家庭用の蓄電池は、特定施設での自家消費や非常用電源が主目的でした。一方、系統用蓄電池は、卸電力市場などで充放電して収益を得られるなど、電力ビジネスの主体として活用できる点が大きな違いです。
電力系統とは、発電所から消費者や工場などの需要家に電力を供給するための送電網・配電網などのネットワークを指します。電力系統は、基本的に発電と消費をリアルタイムで一致させる必要があり、需給バランスの調整が欠かせません。系統用蓄電池なら、必要なときに電力を蓄えたり放出できたりするなどの調整ができるため、「仮想的な発電所」としても機能して、電力系統の安定化に貢献します。
なお、2022年に改正され、2023年4月に施行された電気事業法改正により、1万kW以上の系統用蓄電池から放電する事業は「発電事業」として新たに位置付けられました。これにより、系統用蓄電池事業者は、発電事業者と同様の位置付けで制度上整理され、一定の権利・義務が明確化されたことから、ビジネスとしての予見性が高まったことでも注目されています。
※参照:資源エネルギー庁「系統用蓄電池の現状と課題」(2024年5月29日)
系統用蓄電池の仕組み
系統用蓄電池は、需要に対して相対的に供給力が多い時間帯に電力系統から充電したり、需給が逼迫する時間帯に放電したりするなど、電力系統の安定化のために細かな充放電を繰り返す仕組みです。
例えば、太陽光発電が活発な昼間などの電力が安価になる時間帯に市場から電力を調達して充電し、太陽光発電が減少して、市場価格が高まる夕方や出力調整が必要なタイミングで電力系統に放電します。
また、系統用蓄電池は太陽光や風力などの特定の発電設備と併設する必要がなく、蓄電池単独(スタンドアローン型)で事業を運営できる点も大きな特徴のひとつです。
系統用蓄電池が注目される背景
系統用蓄電池が注目されるのは、主に以下の背景が考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
系統用蓄電池が注目される主な背景
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再生可能エネルギー比率の増加

政府は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの比率を高める方針を進めています。しかし、太陽光や風力による発電は、天候によって出力が変動するため、需要を上回る発電が行われた際に発電を停止または抑制させる出力制御が発生し、エネルギーの有効活用が課題となっています。
系統用蓄電池は、出力制御によって停止または抑制させられるはずであった電気を蓄えて夜間などの不足時間帯に活用できるため、再生可能エネルギーの主力電源化を目指す上で重要な役割を担う存在です。政府も導入補助金を設けるなど、普及に向けた支援を強化していることも注目される要因のひとつです。
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電力市場の変化
系統用蓄電池の収益機会を広げているのが、政府が進めてきた「電力システム改革」です。これは、かつて大手電力会社が独占していた発電、送電、小売の仕組みを自由化し、公平に電力を取引できるようにした一連の改革を指します。
この 電力システム改革によって複数の市場が整備されたことで、電力価格の時間帯ごとの差などを利用して充放電するアービトラージの機会が広がっています。アービトラージとは、価格差を利用して利益を得る取引手法です。また、系統用蓄電池は卸電力市場だけではなく、調整力や容量関連の市場でも収益機会を得られます。
ただし、市場ごとに求められる充放電のタイミングや条件が異なるため、収益を最大化するには複数の市場を組み合わせる運用戦略が求められます。
※参照:資源エネルギー庁「電力システム改革の検証について」(2024年3月7日)
系統用蓄電池事業の収益モデルとは?

系統用蓄電池事業は、電力市場の変動に合わせて充放電を行うことで、収益を上げるビジネスモデルです。主な収益モデルとなる以下の3点を、その時々の市場環境に合わせて使い分けることが収益最大化のカギとなります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
系統用蓄電池事業の主な収益モデル
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卸電力市場による収益化:電気の量(kWh)
系統用蓄電池事業の収益モデルのひとつが、卸電力市場での取引です。
卸電力市場は、電力量(kWh)の売買を行う市場で、日本ではJEPX(日本卸電力取引所)が唯一の取引所です。
電力は同時同量の原則があり、貯蔵が難しいため、需給バランスによって市場価格が変動します。系統用蓄電池はこの特性を活かし、JEPXにおいて、市場価格が安い時間帯に充電し、価格が高い時間帯に放電することで、その価格差を収益化します。
需給調整市場による収益化:調整力(ΔkW:デルタキロワット)
需給調整市場は、電力の需給バランスをリアルタイムで調整するための市場です。需給にズレが生じた際、一般送配電事業者などの要請に応じて調整力を供出することで、待機状態に対する報酬(ΔkW価値)と実際の放電に対する報酬(kWh価値)の両面から収益を得ることができます。
容量市場による収益化:4年後の電力供給能力(kW)
容量市場は、将来の供給力不足を防ぐために、将来(4年後)の電力供給能力(容量)をあらかじめ確保するための市場です。実際に供給した電力量ではなく、必要なときに放電できる供給能力を維持することに対して対価が支払われます。これにより、日々の市場価格変動に左右されない、長期で安定した固定収益の確保が見込めます。
系統用蓄電池事業に適した事業用地も収益化につながる
自社で系統用蓄電池事業へ参入するだけでなく、適した事業用地を所有している場合、その土地を活用することも収益化につながります。ただし、系統用蓄電池の建設は、制度や運用が複雑で専門性が高いため、計画策定や運用事業者の選定については、専門知識を持つパートナーに相談することが重要です。
例えば、環境・エネルギー分野のエンジニアリング企業として創業50年にわたる豊富な実績を持つテス・エンジニアリング株式会社では、以下のような土地に関するご相談を幅広く承っています。
土地の条件の例
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上記を満たしているか判断が難しい場合や、具体的な土地の活用についてはお問い合わせでご確認ください。
系統用蓄電池事業のメリット
系統用蓄電池事業に参入することで得られるメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
系統用蓄電池事業の主なメリット
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まず、最大のメリットは、卸電力市場でのアービトラージや需給調整市場、容量市場への参加により、「電力の価値」を多角的に収益化できる点にあります。
さらに、現在は政府による普及支援が行われており、補助金制度を活用すると、高額になりがちな蓄電設備の導入コストを大幅に抑えることが可能です。
また、系統用蓄電池の導入は、供給過多となる再生可能エネルギーを有効活用し、電力インフラを支える活動となります。これは、企業として再生可能エネルギーの普及促進とカーボンニュートラルへの取り組みとしてアピールできる材料となります。
系統用蓄電池事業のリスクと対策
系統用蓄電池事業には多くのメリットがある反面、中長期的な事業運営においては特有のリスクも存在します。参入にあたっては、以下のリスクを把握し、対策を検討しておくことが大切です。
系統用蓄電池事業の主なリスク
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価格変動によるリスク
市場価格は季節要因や需給環境によって大きく変動するため、想定どおりの裁定機会が得られず、収益が一時的に下振れする可能性があります。
これに対しては、特定の市場に依存せず、複数市場を組み合わせて収益を分散させることが有効です。また、感度分析を行い、前提条件の変化幅を事前に検証し、資金計画に十分な余白を持たせておくことが求められます。
制度変更によるリスク
電力システムは現在も進化の過程にあり、市場ルールが更新される可能性があります。例えば、2024年度から導入された「発電側課金」などは、系統用蓄電池の収益性に影響を与える要因となります。
こうした変化に対応するためには、最新の政策動向を常にキャッチアップし、制度変更に柔軟に適応できる運用体制を整えておくことが不可欠です。
系統用蓄電池事業を始めるならアグリゲーターが重要
2022年の電気事業法改正により、系統用蓄電池は「発電事業」として新たなビジネスチャンスを広げました。しかし、技術、制度、市場運用などにおいて高度な専門性が求められるため、信頼できるアグリゲーターなどのパートナーとの連携が必要です。
テス・エンジニアリング株式会社は、エネルギー分野で培った豊富な実績を活かし、以下のプロセスをワンストップでサポートします。
提供可能な主なソリューション
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自社で系統用蓄電池事業を開始したい企業様はもちろん、所有する土地を系統用蓄電池事業に有効活用したい土地オーナー様に向けて、最適な運営事業者のご紹介も承っています。
系統用蓄電池事業への参入や土地活用にご興味のある企業様は、ぜひお気軽にテス・エンジニアリング株式会社へお問い合わせください。
系統用蓄電池事業に参入するなら専門的な企業と連携しよう
系統用蓄電池とは、電力系統に直接接続して電気を充放電する大規模な蓄電設備です。系統用蓄電池事業の成功のカギは単一の収益源に依存せず、運用力を軸に複数の市場価値を組み合わせた収益設計にあります。
また、技術要素と市場ルールが密接に連動する事業領域であるため、専門的な企業と連携しながら取り組むことが大切です。
よくある質問
Q.系統用蓄電池とは何ですか?
系統用蓄電池とは、電力会社の送配電網である、電力系統に直接接続して電力を充放電する大規模な蓄電設備です。需要に対して相対的に供給力が多い時間帯に電力系統から充電したり、需給が逼迫する時間帯に放電したりすることで、電力系統全体の調整役を担います。
Q.系統用蓄電池のデメリットは何ですか?
系統用蓄電池の主なデメリットは、市場価格の変動による収益の不安定化と、制度や市場ルールの変更による事業前提の変化です。これらの対策としては、複数市場を組み合わせた収益設計や、前提条件の変化幅を事前に検証して余白をもった資金計画の策定、制度変更に柔軟に適応できる運用体制の構築が重要です。
Q.系統用蓄電池はどのように収益を得るのですか?
系統用蓄電池は、主に卸電力市場、需給調整市場、容量市場の3つの市場を活用して収益化を図ります。卸電力市場では、電力価格が安い時間帯に充電し、価格が高い時間帯に放電することで差益を得られます。需給調整市場は、一般送配電事業者などの要請に応じて調整力を供出する仕組みです。そのため、待機状態に対する報酬と実際の放電に対する報酬の両方を受け取れます。さらに、容量市場では、将来の供給能力を維持することに対して対価が支払われます。これら3つの市場を組み合わせ、収益の最大化を目指す運用が大切です。