長期脱炭素電源オークションとは?仕組みや参加するメリットを解説

長期脱炭素電源オークションとは?仕組みや参加するメリットを解説
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長期脱炭素電源オークションは、系統用蓄電池事業への新規参入を後押しする制度として注目を集めています。落札すれば原則20年間の安定収入が得られる一方、競争の激化や調達規制の導入など、事業計画を立てるうえでは注意すべき点も少なくありません。

本記事では、長期脱炭素電源オークションの仕組みや参加するメリット、注意点について、事業参入を検討する企業担当者に向けてわかりやすく解説します。

長期脱炭素電源オークションとは

長期脱炭素電源オークションとは、2050年のカーボンニュートラル実現と電力の安定供給を両立させるため、化石燃料を用いた電源から、再生可能エネルギーや蓄電池といった脱炭素電源への新規投資を促す入札制度のことです。

 長期脱炭素電源オークションには、系統用蓄電池などの脱炭素電源に新規投資(新設・リプレースなど)を行う事業者が参加でき、オークションで約定すれば、原則20年間にわたって固定費水準の容量収入が得られます。長期にわたる収益の安定化が見込めるため、事業者にとって投資判断の後押しとなる制度です。ただし、参加するには条件を満たす必要があります。

 長期脱炭素電源オークションは容量市場の一部として設けられたオークション制度で、2024年1月に第1回の応札が行われました。以降、2026年現在まで年1回継続的に実施されています。

※参考:電力広域的運営推進機関「[容量市場について]長期脱炭素電源オークションについて

長期脱炭素電源オークションが創設された背景と目的

長期脱炭素電源オークションが創設された背景には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた脱炭素電源の不足などの課題があります。こうした課題を解消するべく、以下のような目的で長期脱炭素電源オークションが創設されました。

投資の予見性向上

再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源の建設には、巨額の初期投資と一定の期間が必要です。しかし、電力の小売全面自由化や再生可能エネルギー導入拡大に伴う卸電力市場価格の低下・変動により、電気の売却収入だけでは建設費などの固定費を回収できるか見通しを立てづらく、新規投資が進みにくいという状況がありました。

そのため、長期脱炭素電源オークションでは、約定後の長期固定収入を通じて将来の収益を明確に見通す環境を整えることを目的としています。

電力の供給力不足の回避

火力発電の休廃止が進み、既存の発電所が閉鎖される一方で脱炭素電源の新設・リプレースが進まなければ、将来的な電力の供給力不足につながる恐れがあります。電源開発には数年〜十数年のリードタイムがかかるため、一度不足に陥ると電力の需給逼迫が長期化し、電気料金の高止まりを招くかもしれません。

適切なタイミングで電源投資が進むよう、長期脱炭素電源オークションで「原則20年間にわたる長期の固定収入」を保証し、投資タイミングを見極めやすくすることで、将来の供給力不足を未然に防ぎ、電気料金の安定化を目指しています。

長期脱炭素電源オークションと容量市場や卸電力市場、需給調整市場との違い

長期脱炭素電源オークションは、広い意味では「容量市場」の一部に位置づけられますが、容量市場や卸電力市場、需給調整市場などの市場とは役割が異なります。長期脱炭素電源オークションの役割は、脱炭素電源の建設費などの固定費の回収を保証する点です。

一方、卸電力市場は電力量(kWh)の売買を行う市場、需給調整市場は電力の需給バランスをリアルタイムで調整する市場、容量市場は将来にわたって見込める電力供給能力(容量)を確保するための市場です。

長期脱炭素電源オークションで得られる長期の固定収入(kW)をベースに、日々の発電による売電収入(kWh)や需給逼迫時の調整力(ΔkW:デルタキロワット)、将来の電力供給能力(kW)などを組み合わせることで、収益の最大化と安定化を図れます。

ただし、長期脱炭素電源オークションで落札した電源の場合、ほかの市場で得た利益の約9割は還付が必要な点には注意が必要です。
各市場で取引される価値や役割をまとめると、以下の表のようになります。

長期脱炭素電源オークションと容量市場や卸電力市場、需給調整市場で 
取引される価値や役割

市場の種類

取引される価値

役割

容量市場

長期脱炭素電源
 オークション

将来の供給力(kW)

脱炭素電源への新規投資(リプレース・改修含む)を促し、20年という超長期で供給力を確保する

メインオークション/追加オークション

将来の供給力(kW)

4年後などの将来に必要な電力の供給力を国全体で一括確保し、供給不足や価格高騰を防ぐ

卸電力市場

電力量(kWh)

需要家に供給するための「電気そのもの」を取引する

需給調整市場

調整力(ΔkW)

電力の需給にズレが生じた際、需給ギャップを埋めるための調整力を取引する

※参考:電力広域的運営推進機関「長期脱炭素電源オークションの概要について(応札年度:2023年度実施分)」(2023年6月)
※参考:電力広域的運営推進機関「長期脱炭素電源オークションの制度詳細について(応札年度:2025年度)」(2025年9月)


長期脱炭素電源オークションの仕組み

長期脱炭素電源オークションへ参加するには、事前の参加登録が必要です。参加資格や基本的なフローをあらかじめ把握しておくことが事業計画を立てるうえでも欠かせません。ここでは、参加資格や対象となる電源、オークションの方式などをご紹介します。

参加資格と対象電源

長期脱炭素電源オークションの対象電源は、火力、蓄電池、水力、地熱、原子力、太陽光、風力などが含まれます。また、長期脱炭素電源オークションに参加するには、以下の参加登録が可能な事業者と対象電源の条件を満たしている必要があります。

 長期脱炭素電源オークションの参加登録が可能な事業者

  • 国内法人(日本の法律に基づいて設立され、日本国内に本店または主たる
    事務所を持つ法人)
  • 電源を自ら維持・運用しようとする者のうち、本オークションに応札する意思がある者


 長期脱炭素電源オークションの対象電源の条件の例

  • CO2の排出防止対策が講じられていない火力発電所(石炭・LNG・石油)を除いた、太陽光・風力などを含む発電所・蓄電池の新設・リプレースなどの場合
  • 既設の火力発電所を脱炭素化のために改修する場合
  • 将来的な脱炭素化を前提とした、LNG専焼火力の新設・リプレースの場合

なお、長期脱炭素電源オークションに参加可能な設備容量は電源種によって異なり、例えば太陽光は10万kW以上、蓄電池は3万kW以上などのように定められています。年度によって条件が改定される場合があるため、電力広域的運営推進機関などの最新情報を確認することが大切です。

長期脱炭素電源オークションの対象電源と条件

※引用:電力広域的運営推進機関「長期脱炭素電源オークションの制度詳細について(応札年度:2025年度)」(2025年9月)

なお、一部例外はありますが、以下の電源は長期脱炭素電源オークションの対象外です。

 長期脱炭素電源オークションの対象外となる電源の例

  • すでにメインオークション・追加オークションで落札されている電源(電源等差替によって、差替電源等として市場に参加した場合を含む)
  • FIT制度・FIP制度を適用する電源
  • 電源入札で落札した電源
  • 専ら自家消費にのみ供される電源
  • 専ら自己託送および特定供給のみに供される電源
  • 専ら特定送配電事業者が利用する電源
  • 制度適用期間において、一般送配電事業者が定める託送供給等約款に基づく発電量調整供給契約がない電源

※参考:電力広域的運営推進機関「長期脱炭素電源オークションの制度詳細について(応札年度:2025年度)」(2025年9月)

マルチプライス方式での約定・落札

長期脱炭素電源オークションでは、マルチプライス方式が採用されています。マルチプライス方式は、応札者の落札価格がそのまま約定価格になるオークション方式です。

応札後、原則として電源の種類を問わず、応札価格が安い事業者から順に落札者が決定し、あらかじめ設定された募集量に達するまで選定が行われます。落札した場合は、事業者が提示した応札価格そのものが約定価格として原則20年間適用されます。

長期脱炭素電源オークションの取引の流れ

長期脱炭素電源オークションの基本的な流れは、以下の図のようになります。

まず、発電事業者などは参加登録と資格審査を経たうえで、入札したい容量(kW)と施設の建設・維持などに必要な投資費用(応札価格)を提示します。オークションで約定したら容量確保契約を締結し、期限までに脱炭素電源を建設・稼働させます。その後、容量確保契約金額を受け取りますが、卸電力市場等で得た利益の約9割は還付が必要です。

このように長期脱炭素電源オークションは制度が複雑なため、アグリゲーターと呼ばれる専門事業者を介して進めるのも選択肢のひとつです。

さらに、アグリゲーターに加えて用地確保からEPC(設計・調達・施工)やO&M(オペレーション&メンテナンス)までワンストップで対応できる企業と連携することで、事業全体をよりスムーズに進めることができます。

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長期脱炭素電源オークションに参加するメリット

長期脱炭素電源オークションへ参加する最大のメリットは、初期投資のリスクを抑え、長期的な事業の予見性を高められる点です。

長期脱炭素電源オークションで落札すると、原則20年間にわたり一定の容量収入が約束されるため、初期の設備投資を回収する計画が立てやすくなります。卸電力市場の価格が下落した局面でも、容量収入によって固定費の大部分がカバーされるため、市場動向に左右されにくい安定した事業運営につながります。 

また、長期的なキャッシュフローが保証されることで、金融機関からの信頼性が高まり、大規模なプロジェクトファイナンスなどの資金調達を有利に進められる可能性もあるでしょう。

長期脱炭素電源オークションの注意点

このように参加するメリットがあることからも、応札する事業者は多く、落札競争は厳しいのが実情です。2025年度の応札分からは、電池の調達国に上限を設けるルールが導入されました。蓄電池のセル製造国・地域ごとに、日本を除く1国・地域からの落札容量がリチウムイオン蓄電池全体(またはリチウムイオン以外の蓄電池全体)の30%未満となるように制限されています。

また、落札が保証されるわけではないため、オークションへの参加・落札を前提とした事業計画ではリスクが伴います。落札できなかった場合でも収益を確保できるよう、卸電力市場や需給調整市場などからの収益を組み合わせたマーチャントベースでの事業計画を描いておくことも大切です。

系統用蓄電池事業を長期で安定運用していくには、オークションありきではない事業運営を幅広くサポートできる連携先を確保しておくことが欠かせないでしょう。

系統用蓄電池事業はテス・エンジニアリングへ

長期脱炭素電源オークションは、系統用蓄電池事業への投資リスクを低減し、安定した経営基盤を構築するうえで重要な制度です。しかし、この制度を最大限に活用するには、オークションの対応だけでなく、事業全体を見据えた専門的なサポートが不可欠です。

テス・エンジニアリング株式会社は、系統用蓄電池事業の開発・施工において豊富な実績を持ち、事業用地の開発・確保から系統用蓄電所のEPC(設計・調達・施工)、O&M(オペレーション&メンテナンス)、運用管理(アグリゲーション)まで、ワンストップで対応しています。
長期脱炭素電源オークションの活用を含めた系統用蓄電池事業への参入をご検討の企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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よくある質問

Q. 長期脱炭素電源オークションとは何ですか?

長期脱炭素電源オークションは、2050年のカーボンニュートラル実現と電力の安定供給を両立させるため、再生可能エネルギーや蓄電池などの脱炭素電源への新規投資を促す制度です。容量市場の枠組みをベースに2023年度に創設された制度で、長期脱炭素電源オークションで約定した事業者は、原則20年間にわたり固定費水準の容量収入を受け取れます。

Q. 長期脱炭素電源オークションはいつ行われますか?

長期脱炭素電源オークションは2024年1月に第1回の応札が行われ、以降は原則として年1回実施されています。公募スケジュールの詳細は電力広域的運営推進機関(OCCTO)の公式サイト「募集要綱、約款、業務マニュアル等」などで随時公表されるため、最新情報を定期的に確認しましょう。

Q.長期脱炭素電源オークションのメリットは?

長期脱炭素電源オークションへ参加する最大のメリットは、落札後、原則20年間にわたる安定した収入が保証されるため、初期投資の回収計画が立てやすく、金融機関からの資金調達も有利になる点です。

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